この記事でわかること
- 遺産相続問題に強い弁護士に相談する重要性を知ることができる
- 弁護士に相談すべき場合と相談しなくてもいい場合がわかる
- 遺産相続問題に強い弁護士の選び方について知ることができる
- 弁護士に相談する際の費用の相場について知ることができる
目次
遺産相続問題に強い弁護士に相談する重要性
弁護士の活動領域は幅広く、刑事事件の弁護士のほか、会社などの企業法務を専門とする人、離婚や相続などの親族問題を得意とする人など、多くの専門分野に分かれています。
例えば、刑事事件を専門に扱っている弁護士でも遺産相続問題に関する仕事を引き受けることはできますが、遺産相続問題に関する知識やノウハウは、普段からそのような問題を扱っている弁護士に比べて圧倒的に少なく、最新の情報にも疎い可能性があります。
遺産相続問題を解決する際には、遺産相続問題に強い弁護士を選ぶことが重要です。
弁護士に相談すべき場合と相談しなくてもいい場合
相続が発生したとしても、すべての場合で弁護士に依頼すべきとは言い切れません。
ここでは、弁護士に依頼した方がいい場合と他の専門家に依頼すべき場合を確認しておきましょう。
弁護士に相談すべき場合
相続について弁護士に依頼した方が良いケースは、相続人どうしの争いになる可能性が高い場合です。
相続で揉める原因としては、以下のように様々なものが考えられます。
相続の際に相続人間で揉める原因
相続が発生した場合に多少の争いになることは珍しくありませんが、ほとんどの場合は当事者同士の話し合いによって解決します。
しかし、争いが激しくなると当事者間で話し合うことも難しくなってしまうことが多いため、早めに弁護士に依頼して、争いを未然に防ぐことも検討しておきましょう。
弁護士に相談しなくてもいい場合
相続人の間で争いが発生していない、あるいは争いが発生しないと思われるのであれば、弁護士に依頼する必要はありません。
例えば、相続人どうしの仲が良く日頃から連絡を取り合っており、遺産分割をめぐって特に強く主張する人がいない場合や、相続人が1人しかいない場合などです。
気を付けなければならないのは、争いになるかならないかには、遺産の額は関係ないことです。
少ない遺産の分割をめぐって大きな争いになる可能性も高いため、遺産があまりないからといって安心とは言えません。
また、それまで仲良く過ごしてきた人たちでも、相続によって一気に仲が悪くなることがあります。
特に兄弟同士は仲が良くても、それぞれの家族の中に強く主張する人がいれば、遺産分割協議はスムーズに成立しません。
どのような相続でも争いに発展する可能性はあるものと考え、いざという時には弁護士に依頼することも選択肢に入れておきましょう。
相続を相談できる弁護士以外の専門家
弁護士は相続人同士で発生した争いを、本人に代わって交渉することができる唯一の専門家です。
ただし、弁護士以外の専門家に依頼すべきケースもありますので、何をどの専門家に依頼するのかを整理しておきましょう。
司法書士
相続した遺産の中に不動産があると、相続した人は相続登記をしなければなりません。
相続登記は自分自身ですることもできますが、専門家に依頼して代わりに行ってもらうこともあります。
この時、登記を依頼するのが司法書士です。
弁護士に遺産相続問題について依頼していたとしても、相続登記をする際には別に司法書士に依頼しなければなりません。
もし弁護士に依頼する必要がないのであれば、最初から司法書士に登記だけお願いしましょう。
行政書士
行政書士には、戸籍などの書類の収集や遺産分割協議書の作成などを依頼することができます。
ただし行政書士ができるのは、あくまでも書類の収集や作成だけのため、相続人どうしで争いがない場合に限られます。
遺産分割をめぐって争いとなっている場合には、その解決を行政書士に依頼することはできないので、弁護士に依頼しなければなりません。
また、弁護士に依頼すれば遺産分割協議書の作成まですべてお願いできるため、遺産分割協議書の作成だけを行政書士に依頼することはありません。
税理士
税理士は税金計算の専門家であり、相続税や準確定申告といった税金の計算を依頼できます。
特に相続税の計算は複雑なため、税理士に依頼しないと難しいでしょう。
また、相続税の申告書を提出することで利用できる相続税の特例があるため、相続税が発生しなくなるケースもあります。
このような場合には、相続税が発生しなくても申告書だけは提出しておく必要があるため、不安な場合は確認しておきましょう。
ただし、相続が発生すれば必ず相続税が発生するわけではありませんので、必ずしも税理士に相談する必要はありません。
遺産相続問題に強い弁護士の選び方
弁護士に依頼した方がいいと考えた場合には、どのように遺産相続問題に強い弁護士を選べばいいのでしょうか。
素人ではその判断が難しいと思われるかもしれませんが、誰でも簡単にわかるポイントもあります。
ホームページを確認してみる
弁護士事務所や弁護士法人は、ホームページを開設しているところが多く、ホームページの内容を見れば相続問題に力を入れているのか、その他の分野を専門としているかをある程度判断することができます。
また、所属する弁護士の人数や過去の実績を知ることもできるため、遺産相続問題について専門的な知識を有する人がいるかどうかもわかります。
相続に関する著作や研究成果がある弁護士
相続に関する問題は一般的な関心が高く、書籍や雑誌のテーマとなることが多いため、遺産相続問題について専門的に取り組んでいる弁護士の中には、相続に関する著書を多数執筆している人もいます。
ただ、気をつけなければならないのは、書籍や雑誌の執筆を行っている弁護士の中には、実務をほとんど行っていない人もいることです。
このような弁護士は、知識が豊富でも相続人どうしで意見を調整したり、相手方と交渉したりすることが苦手な人もいます。
また、実務的な依頼を直接受けていないこともあるため、実務に精通しているかどうかを必ず確認してから依頼するようにしましょう。
遺産相続問題を解決した実績がある弁護士
ホームページには、遺産相続問題を解決した実績が記載されている場合があります。
解決実績は、弁護士がどのくらい遺産相続問題に取り組んでいるかの知る目安になります。
解決実績が多いほど、遺産相続問題に積極的に取り組んでいるということになるため、より実績の多い弁護士を選びましょう。
ただし、すべての弁護士がその実績をホームページに掲載しているわけではないため、あくまで目安と考えてください。
経験年数が長い弁護士
実績の数と同じくらい重要なのが、弁護士として活動している年数の長さです。
弁護士となってからの年数が長い方が多くの事案を担当している可能性が高く、いざという時に頼りになります。
弁護士になる前に他の職業で様々な経験をしている場合や、弁護士事務所の職員としての経験がある場合もありますが、大事なのは弁護士として相続人や他の弁護士と交渉を行った経験です。
弁護士と弁護士事務所の職員では、日頃行っている業務が違うため、弁護士としての経験が長い人を選ぶ方が安心して依頼できるでしょう。
費用を明確に説明する弁護士
弁護士費用はかなり高額になるイメージがあるのではないでしょうか。
実際に弁護士費用がいくらかかるのかは、すべてが終わらなければ確定しませんが、正式に依頼する前でも、弁護士費用の計算の基準を明らかにしてくれる弁護士がおすすめです。
弁護士費用がいくらかかるのかは、依頼する人にとっては非常に大きな関心事です。
初めから費用の見込額や計算方法を明らかにしてくれるなど、依頼者の不安に寄り添って対応してくれる弁護士であれば、その後の相談や相手との交渉の段階でも依頼者のことを考えた対応をしてくれるはずです。
逆に、弁護士費用の計算方法を明らかにしてくれない弁護士は、その後の対応で不安を感じるようなことがあるかもしれません。
依頼者に不利な情報も含めて教えてくれる弁護士
弁護士に遺産相続問題を依頼した際には、民法などの法律にもとづいて、依頼者の利益になるように動いてもらいます。
そのため、依頼者は弁護士に依頼した結果、自分に有利になることを期待しますし、弁護士も依頼者に対して有利な情報を伝えようとします。
しかし、実際にはすべてが依頼者にとって有利に働くことばかりではありません。
法律の取り決めによって依頼者に認められないことや、調査・交渉を進める中で依頼者に不利な状況が発生することも珍しくありません。
そのような依頼者にとって望ましくない情報も、弁護士からその都度教えてもらうことができるかどうかが、良い弁護士かどうかの違いとなります。
依頼者にとって良い弁護士は、不利な情報も教えてもらったうえで、さらにその対策を考えてくれる人であり、依頼者にとって都合の悪い情報を伝えない弁護士は、良い弁護士とはいえないのです。
相談や質問の対応が早い弁護士
弁護士に正式に依頼する前であっても、依頼した後であっても、依頼者は弁護士に様々な疑問をぶつけて相談をすることとなります。
その際に、誠実に質問や疑問に答えてくれるか、あるいは対応が早いかどうかも、弁護士選びの大きなポイントとなります。
質問や疑問にすぐに対応してくれない、あるいは満足のいく対応をしてもらえないと感じる場合は、その後もあらゆる場面で不満を感じることになるでしょう。
契約書を作成してくれる弁護士
弁護士に遺産相続問題の解決を依頼するということは、弁護士と契約を結ぶということになり、その際は必ず契約書を取り交わすべきです。
弁護士との契約書には、どのような業務を行うのか、弁護士費用の計算方法はどうなっているのか、弁護士費用をいつ支払うのかといった項目が明記されます。
契約書がないと、追加で弁護士費用が発生してしまうなどのトラブルとなるおそれがあります。
契約書がある場合とない場合とでは依頼者側の安心感がまったく違うため、契約書を作成しようとしない弁護士は避けましょう。
相続税の知識や節税についての助言ができる弁護士
弁護士に遺産相続問題を依頼するのは、遺産分割をめぐる争いを解決することが最も大きな目的です。
ただし、遺産分割の方法によって相続税の負担が変わることを考慮せずに遺産分割を行うと、多額の相続税を支払わなければならなくなることがあります。
相続人同士の争いを解決する一方で、相続税の負担をできるだけ抑えるという観点からもアドバイスをくれる弁護士の方が、依頼者にとっては良い弁護士といえます。
遺産相続問題における弁護士費用の相場
遺産相続問題を弁護士に依頼した場合の費用については、以前は報酬規定とよばれる基準があったため、どの弁護士に頼んでも同額でした。
しかし、現在はその規定が廃止され、弁護士費用は弁護士が自由に決めることができるようになったため、弁護士費用の明確な相場はありません。
旧報酬規定に基づく弁護士費用の額
報酬規定は廃止されてはいますが、現在でもその規定を参考にして弁護士費用の額を決めている弁護士は多くいます。
そこで、旧報酬規定による弁護士費用の額を確認しておきましょう。
以下の表は、遺産相続問題を弁護士に依頼した場合の弁護士費用の計算表です。
相続額 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
300万円以下 | 8% | 16% |
300万円超3,000万以下 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
3,000万円超3億円以下 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
3億円超 | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
例えば、相続した財産の額が3,000万円の場合、着手金3,000万円×5%+9万円=159万円、報酬金は3,000万円×10%+18万円=318万円となり、その合計額は477万円となります。
現在はこの規定をもとに弁護士費用を計算している場合でも、事案の複雑さや交渉によってその金額を下げることは可能ですので、あくまで目安の金額と認識しておきましょう。
旧報酬規定によらない場合の計算方法
弁護士費用の額が自由化されたことにより、旧報酬規定によらずに弁護士費用を計算することができるようになりました。
その計算方法には様々なものがありますが、多くの場合「着手金は10~30万円程度で固定」「報酬金は相続額の10%」というような計算基準を設けています。
例えば、先ほどと同じく3,000万円を相続した場合の費用は、着手金最大30万円、報酬金は3,000万円×10%=300万円の合計330万円となります。
ただし、計算方法は必ずしも一律ではなく、計算方法によって弁護士費用が高くなるケースと低くなるケースがあるため、いろいろな弁護士のホームページで確認してみるといいでしょう。
まとめ
遺産相続問題に直面する機会はめったにないため、周りにも経験のある人は少なく、誰に相談していいか分からないことが多いと思います。
そんな時に頼りになるのは、遺産相続問題に詳しい弁護士です。
自力で弁護士を探すのが難しい場合は、弁護士会や法テラスといった窓口を利用することもできます。
遺産分割をめぐって争いになりそうな場合は、争いが大きくなる前に弁護士に相談することで解決の方法を見つけ出すことができるので、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。